間違いだらけのセ・リーグ野球

近年、日本シリーズも、交流戦も、圧倒的なパ・リーグの優勢が続いています。これがＪリーグなら、セは間違いなくパの下部リーグとして位置付けられるでしょう。本書は、パ隆盛の要因について・高校卒選手を積極的にドラフトで指名、早期に抜擢する長期戦略（対するセは大学卒・社会人出身中心、加えてＦＡ頼み）・内角攻めを多用する攻撃的なピッチング（対するセは狭い球場が災いして外角中心のリスク回避）にあるという論旨をデータや証言を基に緻密に展開しており、説得力があると感じました。私は長年のジャイアンツファンですが、ＦＡ導入後現在に至るまで延々と繰り返されている付け焼き刃の補強には、本当にウンザリしてきました。今年（2018年）、生え抜きの高校卒選手のレギュラー定着が途絶えて久しかったＧの中にあって、岡本和真の覚醒が明るい話題になっています。坂本勇人以来、実に１０年振りです。長いシーズン中には必ず不調の時期もあるでしょうが、セでは貴重なフルスイングの強打者へと大成させるには、辛抱強く使い続けるしかないと思います。本書でも「高校卒野手をきちんと使えば、それに見合った活躍をすることはパの実績が証明している」と指摘されています。大田泰示（現・日本ハム）の轍を踏ませてはいけませんよ、本当に。また、正捕手となった小林誠司が、内角攻めに消極的だった阿部慎之助のリードを踏襲していることも気掛かりです。交流戦で、例えば西武の浅村、山川、森らの平成「野武士軍団」に痛打されたとしたら、正に本書の指摘通りになりますね。そして、イチローが火付け役となったと本書で指摘されている好球必打。メジャーリーグでは大谷翔平が、パでは清宮幸太郎が実践し、今まさに結果を出しつつあります。プロ野球ファンの見識と興味を拡げてくれる、傾聴に値する評論だと思います！